コミュニティを「自走」させるためのセグメント戦略:役割とモチベーションに応じたメンバー育成の設計図
2025年12月11日

はじめに
オウンドコミュニティの運営において、メンバーを深く理解するうえで欠かせないのが「セグメント」という考え方です。どのような人が、どれくらいの割合で関わっているかによって、コミュニティの活動の質や盛り上がりの度合いが大きく変わるためです。運営側がメンバーの属性や役割を把握することで、適切な仕掛けやサポートが可能になります。
まとめ
- コミュニティの活発さはメンバーの構成バランスに直結。「コミュニティロールピラミッド」で各メンバーの役割を定期的に可視化し、構成比の最適化を図る。
- メンバーの「ロイヤルティ」と「外向性・内向性」に基づく「4象限クラスタリング」を活用し、牽引役、集客役、運営役、コンテンツ充実役など、多様な役割を意図的に設計。
- メンバーの「モチベーション(動機)」や「インテンション(意図)」を深く理解し、それに対応する機能や仕組み(例:ゲーミフィケーション、心理的安全性)を導入することが定着の鍵。
- 関与度の浅いメンバーを上位層へ引き上げる「ラダー施策」と、離脱を防ぎ自己効力感(エフィカシー)を高める「定着施策」を連動させ、継続的な成長を促す。
コミュニティメンバーを分類するセグメント方法の一つに「コミュニティロールピラミッド」があります。メンバーの「発言・投稿頻度」「関係性」「行動積極度」「貢献度」といった役割に応じて4種類に分類する考え方です。
具体的には、コミュニティの文化をつくる「コミュニティリーダー層(1〜5%)」安定的な活性化を担う中核の「アグレッシブ層(10〜30%)」ムードづくりを担い潜在的ファンでもある「アクティブ層(40〜60%)」情報収集がメインの「ビジター層(20〜30%)」の4層です。構成比のバランスを定期的に分析し、コミュニティの成長段階に応じて最適化することが、戦略設計の前提となります。
さらに、メンバーの特性と動機を理解するために有効なのが「4象限クラスタリング」です。【外向的/内向的】×【ロイヤルティ高い/低い】の2軸で4タイプに分けるもので、たとえば外向的×高ロイヤルティの「コミュニティ牽引タイプ」は活性化をリードし、内向的×高ロイヤルティの「コミュニティ運営タイプ」は、表には出にくい一方で秩序維持や安心・安全な環境づくりに貢献します。
ここから示唆されるのは、拡大・活性には盛り上げ役だけでなく、聞き手となる内向的メンバーの存在が不可欠だという点です。彼らは知識習得や問題解決を重視しており、そのニーズに応えることで場の厚みが増していきます。
あわせて、「相談する側(質問者)」と「相談に乗る側(回答者)」のバランス=「課題解決ペア」を意識することも重要です。本音で相談できる空気と、興味・関心に基づくリアルなつながりを設計することで、温かみのある交流と高いエンゲージメントが生まれます。

セグメントをさらに活かすには、メンバーの多様な「モチベーション」や、その根底にある「インテンション(意図・志向性)」に応じた機能・仕組みを用意することが不可欠です。たとえば、ステータス欲求が強いメンバーには称号・ランク制度を、心理的安全性を重視するメンバーには匿名投稿機能を提供するイメージです。
最近では、生成AIを用いて投稿や行動履歴からインテンションを分析し、よりパーソナライズされた体験を設計することも可能になっています。
こうしたセグメント分析を実務に落とし込む鍵が、関与度を高める「ラダー施策」と、離脱を防ぐ「定着施策」の連動設計です。ラダー施策では、ビジター層やアクティブ層に対し、役割の明確化やフィードバックの強化などを通じて、「もう一歩関わりたい」と思えるきっかけを増やします。
一方、定着施策で重要なのは、メンバーが自らの貢献を「意味がある」「評価されている」と感じられる「エフィカシー(自己効力感)」を高めることです。運営と協働する機会の提供などがその具体例です。
コミュニティ立ち上げ初期においても、セグメント設計は有効です。「ファンコネクト」のプロセスで最初の30名ほどの初期メンバーを選定する際に、ロールピラミッドや4象限クラスタリングを参考にバランスよく構成することで、文化と成長を支える核を意図的につくることができます。

メンバー一人ひとりの役割と動機を理解し、彼らが自然に成長し「ここが自分の居場所だ」と感じられるよう、ラダー施策と定着施策を組み合わせて設計していくことが、コミュニティを健全に自走させるための確かな一歩となるでしょう。
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