書籍
オウンドコミュニティの成果を最大化するKPI設計の原則と「自分ごと化」の重要性
2025年11月28日

はじめに
オウンドコミュニティ運営ご担当者の皆様、日々お客さまとの関係づくりに取り組まれていることと思います。コミュニティの成果を測る際、「投稿数」や「アクティブ率」といった指標を追うことはもちろん重要です。しかし、あなたのコミュニティは、単なる「交流の場」として終わっていませんか?
書籍『オウンドコミュニティ』の第3章では、コミュニティを「活性化させること」自体を目的とするのではなく、LTV(顧客生涯価値)の向上やロイヤルカスタマーの育成に貢献することをマーケティング戦略上の手段として位置づけています。また、その中でコミュニティは、CRMツールとしての役割も担っています。
本記事では、この「コミュニティを活用したマーケティング」を成功させるための具体的なKPI(重要業績評価指標)の設計原則を解説します。特に、コミュニティの成長フェーズ(第2章で解説された「5 VALUE」)に合わせた段階的な指標の考え方と、メンバーの「自分ごと化」を促進し、持続的な活動を支える仕組み作りのヒントを深掘りします。貴社のコミュニティを事業資産へと進化させるための具体的な行動指針を、ぜひ見つけてください。
まとめ
- 目的の再定義: コミュニティを単なる「活性化」ではなく、顧客ロイヤルティ向上やLTV最大化に貢献するマーケティング戦略の「手段」として明確に位置づけ直します。
- 成長段階に合わせたKPI設計: コミュニティの成熟度を把握するため、「5 VALUE」の成長フェーズ(VisionからEmpathyまで)に合わせてKPIを段階的に設計し、無理なく着実な成長を目指します。
- 指標の深掘り: 投稿数やアクティブ率といった「活動量」だけでなく、協働プロジェクト数やリファラル紹介率など、メンバーの「自分ごと化」や事業貢献度を示す指標を重視しましょう。
- 「他人ごと化」の阻止: メンバーが課題を「自分に直接関係する問題」と認識できるよう、具体的な行動指針と、貢献を目に見える形で示す仕組みを整えることが不可欠です。
コミュニティ運営に携わる実務者の皆様にとって、オウンドコミュニティを単なる交流の場として終わらせず、事業資産として活用することは重要なテーマです。コミュニティは、ユーザー同士の交流を活性化させるコミュニケーションツールであると同時に、顧客ロイヤルティ向上やLTV(顧客生涯価値)の最大化に貢献する、重要なCRM(顧客関係管理)ツールでもあります。
重要なのは、「コミュニティを活性化すること」自体を目的化しないことです。コミュニティとは、あくまでもマーケティング戦略全体の目的を達成するための「手段」にすぎません。コミュニティを通じて、どのような人に集まってほしいのか、どのような効果を発揮し、最終的にどのような成果(ロイヤルカスタマーの育成、潜在ニーズの把握、協働による商品開発、広告費に頼らない拡散効果、LTV向上など)につなげたいのか、マーケティングの入り口から出口までを設計する必要があります。
そのためには、「いまコミュニティがどの段階にあり、次にどの状態を目指すのか」を示す物差し=KPIを、成長フェーズとセットで設計することが欠かせません。以下では、この成長プロセスを整理した「5 VALUE」をもとに、フェーズごとのKPI設計の考え方を整理していきます。

・成長フェーズと連動させるKPI設計
こうした多様な期待に応えるKPI(重要業績評価指標)を設定するためには、「5 VALUE」のフレームワークを活用し、コミュニティの成長過程に合わせた段階的な設計を行うのが共通のベースとなる考え方です。
1. Vision(目的を持つ):芽が出る段階
この初期段階では、コミュニティの土台となる共通の目的や意志を持つコアメンバーの形成を目指します。KPIとしては、コアメンバーの募集数や参加率、そしてアンケート調査などを用いてビジョンや目的への共感度を定量的に測ることが有効です。
2. Connect(つながる):茎葉が伸びる段階
ここでは、メンバー同士が信頼関係を築き、共通点や価値観を発見し、関係性を広げることに注力します。KPIは、交流イベントの開催回数や新規参加者数に加え、相互メッセージ数やプロフィールの充実度など、「つながりの深さ」を測る指標が中心となります。
3. Interact(交流する):花が咲く段階
メンバーが主体的に交流し、活発なコミュニケーションが行われる状態を実現します。指標としては、コミュニティ内投稿数(UGC数)、コメント数やリアクション率、メンバーのアクティブ率(ログイン/投稿/閲覧)が交流の熱量を示します。運営からのコンテンツ投稿数やアンケート回答率も、双方向性を可視化する上で大切です。
4. Share(共有する):実がなる段階
コミュニティ内で得られた価値や成果をデータ分析し、外部へと広げる段階です。KPIは、メンバーとの協働プロジェクト実施数や運営へのコンテンツ提供数が、コミュニティの成熟度を測る指標となります。また、NPS(推奨意欲)の測定や、SNSなど外部への二次拡散数を通じて、コミュニティの影響範囲を定量的に把握します。
5. Empathy(共感する):種ができる段階
コミュニティの価値が自走・循環していく状態を作ります。このフェーズでは、既存メンバーからのリファラル(紹介・推薦)率が強い共感と信頼の証として重要な指標になります。さらに、メンバー間で共通言語やコミュニティスラングが生まれていれば、それはコミュニティ文化が根づき始めた証拠であり、数値化しにくい関係性の「深さ」を測る上で非常に重要です。

・コミュニティの原動力「自分ごと化」の推進
これらのフェーズ別KPIに加えて、コミュニティ全体を横断的に測る全体KPI(総参加者数、エンゲージメント率、コミュニティ由来の売上/購買貢献率など)も設定し、一貫した成長測定を行いましょう。
そして、活動の源泉として欠かせないのが、メンバーの「自分ごと化」です。これは、コミュニティ内の事象を「自分に直接関係する課題」と認識し、行動に結びつけることを指します。運営者は、「他人ごと化」を防ぐため、課題を抽象的な情報で終わらせず、メンバーの生活や目標に具体的に結びつけることが求められます。
例えば、「ゴミを1つ拾う」といった小さな行動でも、大きな課題に貢献しているという認識を持たせることで、無力感を解消し、主体的な行動を促すことができます。行動に対してポイントやバッジを付与するなど、成果を目に見える形で示すことも、モチベーション向上に繋がります。
「他人ごと化」が広まると、メンバーは無関心や受身の姿勢となり、ルール意識の希薄化や無秩序な状態(カオス)を招き、コミュニティ全体のエンゲージメントが低下します。オウンドコミュニティを成功に導くためには、段階的なKPI設計に基づきながら、常に「自分ごと化」を促すための環境整備と仕組みづくりに注力し続けることが不可欠です。
出典: 『オウンドコミュニティ』(LIDDELL Inc.) 掲載先: COMMUDA
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